top of page
執筆者の写真渡邊強

放牧経産牛「わかはな」について

更新日:2022年2月27日

こんにちは

今回は7月14日にお肉にした放牧経産牛「わかはな」についてエピソードと屠畜から肉になるまでの事を書いていこうと思います。


「わかはな」という牛


「わかはな」は平成20年1月6日生まれ。13歳(人間で言うと55歳)

名前の由来は母が「わかこ」父が「第一花国」だったのでそこから文字をとって名付けられました。

写真を見てわかるようにひじょーーに撮れ高の高い牛でした(笑)


「わかはな」は子牛を産み育てる

「繁殖牛」としてずっと我が家で働いてくれました。

普通は8産もすると種付きも悪く、受胎しても流産してしまう事が多くなって廃用になるのですが、「わかはな」はそういった事は無く、なんと12産も頑張ってくれた牛です。


すごく力強く牛同士の喧嘩でも負けた事が無いし、放牧中も群れを先導していたリーダーでした。

群れを先導する「わかはな」

母性も強くて去年子牛を離乳(親と子牛を引き離す行為)してから間もない時期に放牧場に連れて行った時、自分の子牛が心配で6キロの道のりを1人で戻って来たほどです。


牛は2頭以上の群れで行動する動物で、1頭だけ外れて行動するのは自殺行為で普通はしません。そんなリスクを顧みず自分の子牛を思って戻ってきたので正直驚きました。


1頭だけカツカツ歩いているのを警察に見つかって大変だったんだけど...(笑)


そんな「わかはな」は今年のはじめには体調が悪くなり、一時は回復したのですがいつまた悪くなるのか分からないのでお肉にすることにしました。


屠畜(とちく)まで

臓器が悪くなり体への負担が大きくなることから、最後は放牧に出さず牛舎で飼育しました。(それまでの12年間は放牧)

それでも放牧となるべく同じ条件にするために5月には半月だけ放牧。

その後青草を刈ってきて食べさせ、夕方は1、2時間ほど放して運動させて育てました。

左がわかはな。ハッスル中。

実は自分の牛を屠畜場まで連れて行くのは初めての事で、

今まで繁殖牛は廃用になると家畜市場に出して肥育してくれる農家に売って終わり

という流れでした。

だから繁殖農家が屠畜場に行くことも、自分の牛を食べる事もなかったんです。

屠畜の日が近づいてくると目の前にいる「わかはな」を屠場に連れて行き、自分の判断で殺すのだな、と思うとすごく複雑な気持ちになり夢にも何度か出てきました。



7月13日 屠畜の日

ウチには家畜運搬車がなかったので近くの農家から借りて秋田市にある食肉流通公社に向かいました。

すごく暑くて座ってるだけでも汗が出てくる日だったのを覚えています。

下の動画は積込みの様子です。


牛の体重は500キロ近くあったし、急ブレーキを踏んだりカーブで揺れると嫌だろうなと思い、ドキドキしながら運転していました。


食肉流通公社に着いてから淡々と事が進み「わかはな」を車から下し、繋ぎ場と言われる場所につなぎました。「わかはな」は暴れることなく僕の引っ張る方向にスムーズについてきてくれました。


ここでお別れでそこには他の牛がいなく

「わかはな」としばらく一緒にいたら、従業員の人から「早く出ていってください」と言われ、最後に「わかはな」を1人置いて屠畜場をあとにしました。



家畜とはいえ何年も毎日顔を見ている牛を屠場まで連れて行くのは、なんとも言えない気持ちになります。もともと肉にするために飼っているとは言え

一緒に過ごしてきた時間があり、情が無いわけではありません。


家族でもペットでもない難しい存在だなと思いました。


夕方になっても暑く、浮かない気持ちでいつもの仕事をしていると

突然気持ちのいい冷たい雨が降ってきました。

すると偶然、牛舎の前に虹がかかり、雨と一緒になんだか心が洗われたような感じがして

その日は終わりました。



肉になってから

後日また食肉流通公社に向かい、今度は「わかはな」の肉を見に行きました。

どんな肉になっているんだろうとドキドキしながら見た「わかはな」の肉がこれ。


牛を半分に割って吊るされた状態(枝肉)
右後ろに見える肉は普通に肥育された牛

ここでは牛肉の格付けが行われていて

A5とかA4と呼ばれるのはここで分かります。

どれがウチの牛なのかは1発で分かりました。肉付きは薄いし皮下脂肪もなくて所々筋肉むき出しだからね。

経産牛だから当たり前なんだけど。


ああ、肉になったんだなと思いました。


肉を見ていて

1番驚いた事がありました。

それがこちら

丸く見える部分がロース芯、細かくて白いのがサシ(脂肪)

これはロース芯の断面です。

写真中央に見える丸いところね。


これには驚きました。


予想以上にロース芯にサシが入っていたんです。

よく見ると薄く細かく見えるサシがいくつも入っているのが分かると思います。

見た時思わず声を出してしまいました。


一般的にこのロース芯にどのぐらいサシが入っているかで牛肉の全体的なサシの入り具合が分かり、価値が決まります。

今まで放牧していてほとんど草しか食べず、穀物での肥育をしてない。

そんな育て方なのにここまでサシが入るんだと、

僕自身はサシの入っていない真っ赤な肉を想像していたので本当に驚きでした。


いや、、、

これのなにがすごいのかよく分からない

と思った方。

こちらを見てください。

年齢は違うけど、同じ牧草で飼育した

別品種の肉です。

中央に見える丸いところがロース芯です。


「わかはな」と比べるとこのロース芯の中に

サシは数えるぐらいしか入っていないのが分かると思います。

同じ育て方なのに肉質がここまで違うんです。

これが黒毛和牛の力なんだなと改めて感じました。


あ、ちなみに後ろに並んでいた牛肉は全部こんな感じ。


すっっごい霜降り!黒毛和牛の力って大きいんです。


という事で、今回は「わかはな」が肉になるまでを書きました。

この後、サイトで肉の販売もするのでよかったら見てください。


あえて牛の名前を公表したのは

僕と同じ気持ち、目線で「わかはな」を見てくれるのかなと思ったからです。

どういう牛なのか注目して食べる事ってあまり無い事だと思うし、

命を頂くことに少しでも思いを馳せてもらえたらと思います。

販売楽しみに待ってください。


最後まで見てくださりありがとうございました。












閲覧数:167回0件のコメント

最新記事

すべて表示

スジ

牛肉をカットする際に出るのがスジです。 寒い季節はおでんやすじ煮込みに最適です。 スジしか出せない食感ってありますよね!!ぜひトロトロになるまで煮込んで食べてください! 煮込んでも崩れない、さらに味付けに負けないぐらいの肉の濃い味を楽しんでください! ショップページにもどる

Comments


bottom of page