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執筆者の写真渡邊強

消費者は知らない!肉質を左右する血統のはなし

こんにちは。

今日は僕たちが食べている黒毛和牛について和牛農家や肉屋は知っているけど、

消費者は殆ど知らない、肉質に大きく関わっている血統

について話して行こうと思います。

これはブランドとはちょっと違います。


和牛の血統とは

血統ってなに?ブランド牛とどう違うの?

と思う方が多いと思います。


ブランド牛と聞くと

よく耳にするのは松坂牛や神戸牛、

僕の地元の秋田だと秋田由利牛や秋田錦牛なんかがよく聞くワードなのではないでしょうか?



これらはそれぞれブランド独自の基準を設けてあって

それをクリアすればブランド名がつくというものです。


例えば

肉質等級◯以上や

特定の飼料をたべさせたり、

どのぐらいの期間その場所で育ったか

などの基準で設けられる事が多いです。

もちろんその中に血統を重視しているブランドもあります。

ブランドっていうのは大体こんな感じ。


※肉質等級とは「脂肪交雑」「肉の色沢」「肉のしまりときめ」「脂肪の色沢と質」を総合的に評価して等級をつけるもの。

1番高い評価が5で低いのは1となる。

肉も売り文句でA5の12番と耳にすると思うが「5」という数字は肉質等級。



ブランドと血統というのはまた別。

そこはまた深い世界が広がっているんです!


じゃあ血統ってなに?

というのが今日の本題。



同じ黒毛和牛にも様々な特徴を持った血の流れがあります。

例えば

増体(発育)のいい血統

肉質のいい血統

体格のいい血統

などにそれぞれの血統に特徴があります。


その血統というのは特徴で分かれていて

大きく分けて3つ


但馬系、気高系、藤良系


に分かれています。

※他にも茂金系や栄光系など何種類かありますが今回は省きます。 3つの血統について説明します。


1. 但馬(田尻)系(たじま、たじり)

この血統は兵庫県から出てきた「田尻号」という牛から続いている血統です。


田尻号

但馬系は肉質がよく美味しいことで知られています。 その反面増体はあまり良くなく小柄な牛が多い事が特徴です。


なんと現在の黒毛和牛の99.9%にこの血筋が入っているんです!すごい!

それほど良い肉質であると言うこと。

黒毛和牛の肉に脂肪(サシ)が多いのはこの血統が関係しています。


先述した通り肉はおいしいのに肉量が取れないため

経済性が悪く兵庫県を除き全国的に

純血の但馬系だけが入った牛はほとんど飼育されていません。


同じ期間飼っているのに大きさが全然違うからね。


一方、兵庫県では但馬系の肉質を追求し、但馬系同士で近親交配の改良を行い

「神戸牛」など世界に名を馳せるブランドを確立しています。


神戸牛が美味しい理由というのはこの事が関係していたりします。


僕も但馬牛を食べた事がありますが、やっぱり違いました。

脂の味というかなんというか...とにかくおいしい!

食べ比べてみると違いが分かると思います。


兵庫の方で出てる但馬系の※種雄牛には「◯◯土井」という名前が多いです。


てか全部「土井」しかついてない。


全国的に出回っている牛で有名なのが

「安福久」や「美津照重」


※種雄牛とは精液を採取する雄牛の事。

採取した精液は薄めて数を増やし凍結され、販売している。

秋田で有名な牛は「義平福」


特に安福久という牛は肉質の遺伝能力が強く人気な牛で、

安福久の子は勿論、

その血を引いている母牛から産まれた牛も肉になった時の成績が群を抜いていいんです!

ウチにも2頭います。

やまひさ

すすき


2. 気高系(けだか)


この血統は鳥取県から出てきた「気高号」という牛から続いている血統です。


気高号

特徴はなんといっても増体、発育に優れていて肉量が多く取れる事。

要するに大きな牛というわけです。



また肉の中に含んでいるオレイン酸(不飽和脂肪酸)の含有値が高い傾向があり、

近年ではそこに注目してブランド化を進めているところもあります。

気高系は肉量が取れることから全国の肥育屋さんに好まれていて、改良も進み年々和牛も大型化してきました。


気高系で有名な種雄牛は

「平茂勝」「勝忠平」「百合茂」「諒太郎」なんかが有名ですね。

特に平茂勝の登場で一気に大型化が進んだそうです。


あおやま(諒太郎)


3. 藤良系(ふじよし)

この血統は岡山県から出てきた「第6藤良号」という牛から続いている血統です。


特徴は気高と同じで増体に優れていて肉量が取れること。

藤良系で代表的なのは

「第一花国」「美国桜」「隆之国」「福之姫」なんかが有名ですね。


わかはな(第一花国)

ざっとこんな感じ。

結構マニアックで面白いでしょ。


僕ら繁殖農家はこの血統の組み合わせを意識して牛を生産しています。


増体の良い気高系の母牛に

大きくなりずらい但馬系を交配して

肉質の良い大きな牛を作ったり


反対に肉質のあまり良くない牛には但馬系を交配して肉質の改善を図ったり。


肉質の面だけじゃなく、体格の小さい牛に大きくなる気高系を交配すると

産まれてくる時大きすぎて難産になったり、最悪出てこれなくて死ぬ事だって珍しくはない。


逆に小さい牛ばかりだと市場での価値は低くなる。


血が近ければ近いほど産まれてくる牛が弱く病気にもかかりやすい。

だから基本的に血が離れるている同士の組み合わせを選んで交配するし、そういう母牛を残しています。


2月市場のウチの上場牛。

上の写真はうちの2月市場の子牛です。


1番左の「愛之国」が上場牛の父の名前。その右隣から母の父、

祖母の父と続いている。

この流れだと

藤良✖️但馬✖️気高✖️但馬になる。

まあまあバランスの良い交配です。



最近では

純血の種雄牛は少なくなり

藤良✖️気高、気高✖️但馬など

混ざった牛が出てきました。

気高系なのに小さい牛など、交配が難しくなってきているのも現実です。


そういう事にも注意しながらみんなあれこれ考えて黒毛和牛というものが生産され、改良されてきました。



でも、いくら血統がよくても必ず思い通りの牛になるわけじゃないんです。

あくまで一因なだけ。

育て方の影響だって同じぐらい大きい。

そこが難しいところだし面白いと思う。




最後まで見ていただきありがとうございました。







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