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執筆者の写真渡邊強

全国で1%未満しか流通していない放牧経産牛について

更新日:2021年10月8日


タイトルにもある通り

全国で1%未満しか流通していない

「放牧経産牛」について説明していきます。



「どういう肉なのか?」

「一般に売られている黒毛和牛となにが違うのか?」

「どうして一般には流通していないのか?」

「味はどうなのか?」


などなど色々疑問があると思いますので

  1. 放牧経産牛

  2. 一般の黒毛和牛との肉質の違い

  3. 黒毛和牛という遺伝子の影響

の順に見ていきましょう!



放牧経産牛

放牧経産牛とは

お産を経た、尚且つ放牧している母牛

のことです。


普通の黒毛和牛とどう違うのかと言うと

肉になるまで3年なのが一般的なのに対して

経産牛は5~10年の間、子を産むために育てている牛です。


普通牛肉は年数が経つほど市場での価値が下がり経産牛は評価されてきませんでした。


ですが実は経産牛は経産牛にしかない大きな特徴も持っています。

それは

牛肉は年数が重なるほど熟成され、肉の味が濃くなるという事。

業界では前から知られていたことでした。


もっと言うと世界一美味しい肉も長く育った経産牛と言われているんです!


そういった牛は普通、穀物を食べさせて肥育(太らせる)するのですが

それをウチでは放牧で、青草で仕上げました。


ですが放牧での生産はスジが多いし硬い、肉量がとれなくて効率が悪いなど扱いずらい肉として、業界では嫌われ非常識なやりかたです。

だから全国でも1%未満しか流通していないんです。


どうしてそんな非常識な放牧にこだわるのかと言うと

一般的な黒毛和牛は輸入したとうもろこしや小麦など穀類主体で与え、青草はほとんど食べずに肉になっています。

そういう現状を見て僕は以前から

輸入飼料に依存せず、自給飼料で牛肉を生産したいのと

牛は人間の消化できない草を肉に変えるという能力があるんだからそれを最大限活かしたい

という思いがあり、

そう考えて行き着いたのが「放牧」でした。



ネガティブなイメージが多い放牧生産でしたが実際自分で生産した牛肉を食べみると、すごく美味しかったんです!


それまで聞いていたイメージと違ったので驚いたし、十分この肉にも可能性があってもっと追求していきたいと思いました。


ここからは詳しく違いを見ていきましょう!


一般的な黒毛和牛との肉質の違い

先述した通り普通の牛は一生を牛舎の中で過ごし

長くても3年で肉になります。

これは3年で成長が止まり、それ以上飼っても大きくはならないから。

3年だと肉色もいいし、柔らかいけど、肉自体の味はどうしても薄い。

脂の味がメインの霜降り牛肉です。


そして我が家で出す放牧経産牛肉は

10年以上生きた牛。

味の濃さは比べ物にならないぐらい濃いんです。

食べた瞬間、口の中で溶ける柔らかい肉と違い硬さは目立ちますが

噛めば噛むほど肉汁が出て肉の味を楽しめる、煮込んでも肉が崩れず濃い味が残る

そんな牛肉です。


簡単に言うと赤身の黒毛和牛というわけです。


放牧経産牛「わかはな」のソトモモ

更に肉質にも大きく影響している放牧についても詳しく見ていきましょう。


ウチではもともと他の農家と違い

5月から11月の間、鳥海山の麓にある放牧場に放牧をしていました。

「上の山放牧場」

面積は約60ヘクタール(東京ドーム13.7個分)


放牧中、牛たちは自然に生えている

多種多様な草や木の葉を食べ鳥海山の湧き水を飲み、力強く育ちます。

それが肉に放牧でしか出せない独特の草の風味を与えて美味しさにつながりました。




黒毛和牛という遺伝子の影響

また面白いのが

放牧で草しか食べずに生産された肉は全くサシ(脂肪)が入らないと言われていました。


ですが実際は違いました。下の画像を見てください。

別品種のサーロイン
放牧経産牛「わかはな」のサーロイン

この2つの肉は月齢を除けば、ほぼ同じ飼育方法です。


ロース芯(肉の中央にある丸い部分)をよく見ると

上の肉は数える程しか脂肪が見えないのに対して、

下の肉はよく見ると細かい脂肪がいくつも入っています。

比べると一目瞭然。

違いがわかリますよね。


これを初めて見た時、放牧でもこんなに脂肪が入るんだ!と驚きました。


どうして同じ育て方なのに肉質が違うのか。

答えは牛の「品種」が関係してるから。


我が家にいる牛は全て

「黒毛和牛」

「黒毛和牛」は他と違い特殊な品種で脂肪が入りやすいという特徴があります。

よく見る霜降り牛肉は実は黒毛和牛にしか作れないんです。


更に何十年もかけて品種改良してきたおかげで

肉質のバラツキも少なく、より品質の高い肉ができるようになりました。


だから黒毛和牛は放牧していても真っ赤な赤身じゃなく、少し脂肪が入るようになったのです。

この脂肪の入りが丁度いいぐらいで黒毛和牛なのに食べても飽きない

そんな肉になってくれました。

放牧経産牛「わかはな」のシャクシ(肩の肉)

「放牧」「牧草」「経産牛」「黒毛和牛」

全てが噛み合った特別な牛肉。


これが放牧経産牛の大きな特徴です。



え?いやいや、

よく見る霜降り牛肉も放牧して、草を食べて放牧して育てられてるんじゃないの?

と思った方。


実は餌から飼育環境など全っ然違います。


通常の黒毛和牛は牛舎の中で一生を過ごします。

エサは先述したように穀物がメイン。

また青草は脂肪の色が黄色くなってしまうので白色になるように稲わらしか与えません。

そうして霜降り牛肉ができます。

意外に思った方もいるんじゃないでしょうか?




左の画像は肥育して出荷直前の牛です。

肉付きが放牧経産牛と全然違うのがわかると思います。






決して放牧してるから良いとか、

霜降り牛肉は牛にとって不健康そうだし可哀想で悪い!

と言っているわけではありません。

霜降りの牛肉はその遺伝子の力と、何十年もの改良と研究によって世界に誇る牛肉になりました。あんなに脂肪が入る牛肉は世界中では黒毛和牛しかいません。

だから否定するつもりは全く無いし、それがあるから放牧経産牛も輝くとも思っています。


ただ伝えたいのは放牧で生産された黒毛和牛も美味しい、ということです。

どっちが良いとか悪いとかではありません。

それぞれ強みがあって良いよね、と僕は思っています。




 

まとめると

一般に流通している肉

・肉になるまで3年

・サシの多い霜降り牛肉

・肉自体の味は薄いが、柔らかく口の中で溶ける、脂肪の味。

・生まれてから肉になるまで牛舎の中で過ごす

・エサは主に小麦、とうもろこしなどの穀類と稲ワラ

・1頭からできるだけ肉をとるために飼育している


放牧経産牛

・肉になるまで10年以上

・サシの少ない赤身中心の牛肉

・10年以上生きているので肉自体の味は濃く、噛めば噛むほど肉汁が出てくる。

・夏は放牧、冬は牛舎で過ごす

・エサは放牧中は自然に生えている草や木の葉を自由に、冬は夏の間に収穫した牧草

・自然本来の姿に近い形で飼育している


 


放牧経産牛は食べてみると

部位ごとに硬い部分もあれば柔らかい部分もあり個性がすごく強いお肉です。


牛肉は大きく分けると14種類にも分れています。

それぞれ部位ごとに味の濃さや柔らかさなど全然違い、合う料理もあります


オススメの料理など別にブログで説明していますので、そちらもHPからとんで是非見てください!

聞いたことのない部位もあって

意識するときっと食べるのも楽しくなると思います。



草を肉に変えるという牛の1番の強みを生かした牛肉。

鳥海山の大自然の恩恵を受けながら何年も育った特別な牛です。


どこでも買えるわけじゃない牛肉をぜひ一度ご賞味ください!


放牧経産牛「わかはな」













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